旭川にあるグリーンテックス株式会社の佐藤一彦社長にお話を伺ってきました。
同社は、エルディアイで取り扱っている北海道産黒にんにくの原材料である「彦一にんにく」の生産・販売を行っている会社です。
緑化事業で立ちふさがった課題~なぜ芝が生えないのか~
グリーンテックス株式会社の事業内容のひとつに土壌分析・土壌改良がある。
この技術が彦一にんにくの品質に大きく貢献している。
先代から家業を引き継いだ佐藤社長は、その後に「環境」「自然」をキーワードとして緑化事業部を立ち上げ、緑化工事部門に事業転換を図った。堤防や道路法面(のりめん、斜面)に芝生のタネを吹き付けて緑化するという仕事だ。
設立当初は困難が続いた。役所から送られてくる設計書どおりにやったのにうまくいかない、ポヤポヤとした芝しか生えない、ということが何度もあった。その都度「もうお前のところには仕事をやらない」と言われ、なぜ芝が生えてこないのかとくやしい思いをしたという。
独学で重ねた研究。そして行き着いた「植物は土次第」
そこで、「うまくいかない現場の土」と「うまくいっている現場の土」とを比較するために土壌分析に出してみた。しかし、学生時代から化学は好きだったけど進学したのはバリバリの文系という佐藤社長。分析結果の書類に並ぶ専門用語はチンプンカンプンで、国会図書館に何度も通っては一から研究を重ねることになった。
そうしてわかってきたのは「植物は土次第」ということだった。
土の力と植物の力、それを生かすのが有機ということ
「色々な種類の雑草が元気に生えている土地ほど土のバランスが良い」と佐藤社長は言う。雑草も植物。それが多岐にわたって育つことができるのは、その土が肥沃な証拠である。そういう土地の雑草は抜いたら処分せず、切り倒しておく。そうすることで肥沃な土からもらった成分を再び土に返すことができる。雑草だからといって除草剤など撒いて駆除してはいけない。大切な肥料になるからだ。
また、陸だけでなく、海にも土の力をアップさせる生物がたくさんいるそうだ。そのひとつがヒトデ。昔から「ヒトデはゆでて畑にまくと虫がわかない」と言われていて、害虫を寄せ付けない力を持っている。それを生かして開発したのが、同社の人気商品である天然素材100%の「土アップ」という自然肥料。
高い品質の作物を作るために、自然の摂理から技術を学ぶべし~これは同社の企業理念となっているが、それを実践していくことが「有機農業」と言えるのかもしれない。
「地元を元気にしたい」という思いから始めたにんにく栽培
なぜ、にんにくを作り始めたのか? そんな質問をしてみた。その答えは「日本人を元気にしたかったから」。
緑化事業は軌道に乗っていた。しかし、公共事業には波があり、それだけをやっていてはいつか会社は立ち行かなくなる。土づくりのノウハウを生かして、何かを作ってみよう。そう考えたとき、思いついたのがにんにくだった。昔から滋養強壮に効くとされていたにんにくは、栄養分析の結果、中性脂肪の分解作用や殺菌作用なども高いとされている。そんなにんにくづくりを通して、まずは地元を元気にしていきたい。それが彦一にんにくの始まりだった。
完全無農薬でのにんにく栽培
にんにくづくりを始めるにあたって、生産量日本一である青森の農家をまわった。そこでわかったことは、青森では有機で作られているにんにくはあまりない、ということだ。佐藤社長の目指すのは完全無農薬でのにんにくづくり。価格ではかなわないが、質では勝負できる。試行錯誤を重ねて「有機で」「糖度40度以上」という美味しいにんにくを収穫することに成功。また、平成20年には有機JASの認定も受けた。その品質は有名スーパーストアのバイヤーにも認められ、数々の高級食材と共に店頭に並べられている。今や、売り切れ必至の人気商品だ。
畑はどんどん広がっている。現在は、剣淵町や当麻町などにある地元の農家に技術指導し、一部生産を委託。来年は5~6tの生産量を見込んでいるそうだ。
「食」の大切さをたくさんの人に伝えていきたい
本業の傍ら、佐藤社長は中国やロシアなど海外に有機農業の技術指導に出向いている。また、旭川で行われる市民セミナーなどにも呼ばれ、農家や家庭菜園に役立つ土づくりの話や「食」についての講演を行うことも多い。
「食」は人間の基本である、ということを日ごろから強く感じていた。
きちんと育つためには、きちんと食べることが重要だ。しかし現代の日本人はこの当たり前のことがなかなかできていない。安心で美味しいものを食べることの大切さ、そしてそのために何をするべきか、それを伝えていきたいという。
佐藤社長と弊社スタッフ
直筆の企業理念